この時は、T号からの位置通報等もなかったことから、船名不詳船として日本語と英語により注意喚起を行っていたところ、第三海堡西側付近に配備し、圧流されてくる南航船の動向に注意していた航路しょう戒の巡視艇二隻がT号に向かい、船名確認と探照灯による第三海堡の存在を知らせる注意喚起を行った結果、同七時十分ごろT号の船名を確認しました。
同時十三分ごろようやくセンターからの注意喚起にT号が応じて、針路を変更し、第三海堡の手前約二五〇メートルのところで乗り揚げを回避することができ、同時十五分ごろ航路に戻り、浦賀水道航路を出航しました。
T号が浦賀水道出航後、同船の船長からセンターと巡視艇の注意喚起のおかげで、乗り揚げ事故を回避でき、心から感謝しますとのメッセージがあり、センターとしても平成五年十月に発生したロシア船の第三海便乗り揚げ事故のような大きな海難を未然に防止できたことに喜びを感じました。
〈ノリ網への乗り揚げ防止〉
平成七年二月一日午前一時五十九分ごろ、レーダー監視にあたっていた管制官は、浦賀水道航路の南口付近を速力約一〇ノットで北東方向に直進している小型船舶を確認しました。管制官は、同船は変針して北航航路に入航するものと思っていたところ、この船はそのままの針路、速力で千葉県笹毛沖に設置しているノリ網の方向に直進しました。
管制官は、日本語と英語により船位確認、前方ノリ網ありの注意喚起を連続して行ったところ、同二時二十二分ごろ、この船は突然大きく左転し、同時四十二分ごろ浦賀水道航路北航航路に入航し、無事横須賀港に入港しました。
センターからの通報により、横須賀海上保安部の海上保安官がこの船を立入検査したところ、この船は四九九総トンのガット船(砂利運撮船)F丸で、大井川港から横須賀港に向かったものでした。
当時当直中の一等航海士が自動操舵にして見張りを行っていましたが、当直に入る前に風邪気味のため、風邪薬を服用したことから眠気をもよおし、浦賀水道航路入航直前に船橋で居眠りをしてしまい、ノリ網直前のところでVHF16CHでセンターが注意喚起をしているのに気がつき、あわてて左転し、やっとノリ網への乗り揚げを防止できたものです。
この事例は、センターの注意喚起が目覚まし代わりになったことから、幸いにしてノリ網への乗り揚げを防止できたものです。

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おわりに
〈国際VHF16CHの聴取を〉
船名不詳船に対する注意喚起にも限界がありますが、このようにセンターが行う情報提供により、大きな海難事故を未然に防止することもできますので、東京湾内を航行中は必ず国際VHF16CHを聴取するようお願いいたします。
センターでは、レーダー監視に基づく情報提供のほかに、情報課が行っている一般情報もあり、こ

 

 

 

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